さよなら、いつか。①―幕末新選組伝―

「あず、どうかした?」



翼が心配そうに覗き込んでくる。



その髪が触れてくすぐったい。




「…なんでもないよ。」




気味が悪い。



低くどこか妖艶のある男の人の声のような…。




「翼、あっち見にいこ!」



壬生塚と書いてある赤い橋が架かっている方を指さす。




「あ、あぁ。」



翼の腕をがっちり掴んで足を速める。




じっとしていられない。




頭の中で警告が鳴るように、この場所は何かあると直感する。





―――ようやく、思い出した?




「ひっ!」



橋に差し掛かったところで、声がはっきりと聞こえた。