さよなら、いつか。①―幕末新選組伝―

「新選組のところにいるなら会いに行けない距離じゃない。それに、歴史だと来年甲子太郎は新選組に加盟するんだ。」





「そうなの!?」





案外身近に居るのかもしれない。




翼が違う時代にいたらどうしようと思っていたから少しほっとした。




「でも、そのあと新選組は甲子太郎を・・・。」




翼は何か言いかけて止める。




新選組が伊東甲子太郎を?




「いや、なんでもない。その前に帰ればいいだけなんだ。」




その前に。




一体歴史ではそのあとどうなるんだろう。




「帰ろう、あず。未来に。みんな待ってるよ。」




翼の優しい言葉に胸が苦しくなってくる。




帰りたい。




「帰りたいよ、翼・・・。」



こんな畳じゃなくて、温もりのあるカーペットの上に座りたい。



学校に行って友達とはしゃいで、家に帰ってお母さんの温かいご飯を食べて。


当たり前が幸せだった場所に帰りたくて仕方ない。



「翼が一緒でよかった。」



本当にそう思う。




一人じゃないって思えたから頑張れた。




翼は、んんっ!と咳払いをした。




照れてるのかな?




「充電が勿体ないから切るね。何か辛いことあったときとかは電話して。」





「うん。それじゃあ、ばいばい。元気でね?」




また会える日まで、どうか無事でいて。




「あずも。それじゃ。」
 



翼はそれだけ言うと電話を切った。