「幾つか質問があるから、答えてもらうぞ。」
近藤さんの言葉にこくんと頷く。
うう、こんなに緊張するのは中学の文化祭でメロスの劇をやったとき、村人役の演技をしたとき以来だ。
言葉を丁寧に拾わないと。
間違ったことを言ったら、土方さんに一発で斬られてしまうかもしれない。
土方さんをちらりと見ると、やはりこちらを睨んでいたから背筋がぞっとした。
「まず、お前の名を聞いていなかったな。名を名乗れ。」
「一之瀬あずみです。」
揺るがずにはっきりと答えた。
嘘は言っていないんだと、堂々と振舞うんだ。
「一之瀬か。聞かぬ名だのう。」
そりゃそうだろう。
元からこっちにいた訳ではないのだから。
「お前のその身なりは、どういうものなんだ?とても妙な格好をしている。」
むむむ。
この質問、どう答えよう・・・。
とてもじゃないけどこれが庶民の格好ですなんて無理がある。
鎖国時代である今、外国から来たなんて言ったらますます命は危ない。
どうしよう・・・。
答えが見つからない。
言ってしまおうか、本当のことを。
でも、信じて貰えるだろうか。
「どうした一之瀬くん。答えられないのか?」
ぐっと身体に力を込める。
「信じて貰えるかわからないけど、これからはなす事は本当のことです。」
今話さなくてもいずれは話すことになるだろう。
一度、深く深呼吸をする。