しなやかに歩く篠原くんの後に続いて、私たちは高台寺のなかを歩く。 外から見たときも思ったけれど、中から見ても凄く綺麗。 新しいとか、そういうものではないけれど。 「ここだよ。」 ぴしゃんと閉ざされた襖の前で、足を止める。 ここまで来てしまった。 翼に、会える。 一か月前だったら、喜んでこの取っ手に手を掛けただろう。 でも、今はどうしても躊躇ってしまう。 再び緊張が戻ってきて、引き返そうか、とも考えてしまう。 そんな私の背中を押すのは、彼。