目の前に立ちはだかる山を指さす。
「樺色かな…。」
樺色、かばいろ。
燃え上がるような、樺色。
山は一面紅葉していて、眩しいくらいにその色を発色していた。
樺色は、まるで私の気持ちを表しているみたいに、恍惚な赤を揺らしている。
「・・・どうかしたの?」
優しい声が降ってくる。
同時に、胸が苦しくなって、息がしずらい。
帰るか悩んでいたことを、言うべき?
言わないべき?
2つの選択肢が、容赦なく私を悩ませる。
言っても、良いだろうか。
「・・・実は・・・」
ぽつり、言葉を落とした。
沖田さんなら、きっと正しい選択を教えてくれる。
そう思って。

