さよなら、いつか。①―幕末新選組伝―




「どうしたんだよ?」




なにがなんだか分からない。



なんで篠原が切れるんだ?




「翼、あんな女好きになるのなんて止めろよ。」




「あずはなんて言ったんだ?」




篠原はムスッと頬を膨らませた。





「“今は帰れない”って。」





“今は”




曖昧な返事に喜んでいいのか、悲しむべきなのかわからない。




 
今は無理だけど、帰る気はあるってこと?





それともただ俺に気を遣っただけ?




「俺は面倒くさいのとはっきりしてないのが一番嫌いなんだ。」




篠原はふんというように捨て吐いた。





確かにこの返事ははっきりしていない。





寧ろ俺にとっては事態をややこしくさせるような返事。





「置いて帰っちゃえば?」





「それは無理!」





あずを置いてなんか帰れるわけがない。





篠原はそんな俺を気に入らないように見てくる。




いや、篠原が気に入らないのはきっとあずだろう。




「まぁ、あずみが居れば翼もまだこの時代にいるんだろ?」