さよなら、いつか。①―幕末新選組伝―




「お前があずみ?」




は!?




いや、まさかそんなことは・・・。




慌てて篠原をみると、案の定正しく携帯を持って耳に当てていた。





いくらなんでも発信は出来ないだろうと思ってディスプレイをのぞき込むと、確かに電話はあずに繋がっていた。





や、やばい!



というか、何でこいつ携帯使えるんだよ!





あたふたしても繋がってしまったものはどうしようもない。


  


今すぐ篠原から携帯を奪ってすぐに切るボタンを押せる勇気も。




篠原に変わって俺が話す勇気もない。




もうなすすべはなかったから、取りあえずその場に座って二人の会話を聞くことにした。




心臓がバクバクと異常なほどに鳴っている。





「単刀直入に聞くけど、あずみは未来に帰る気がないの?」





いやいや、単刀直入過ぎるだろ!






というか、その答えを聞きたくなくて電話出来なかったのに!




「篠原・・・」





「翼は黙ってて!」




やっぱり止めよう、と思ったのに、予想外に篠原に怒鳴られてしまった。




これで二択の一方は消える。





俺はあずの返事を聞かなければなくなってしまった。




くそ篠原!と思う反面返事が聞くことにドキドキしている自分がいる。




緊張しすぎて肝心の二人の会話が頭に入ってこないくらい。




過去か、未来か。



きっと、帰るなら今。




「・・・お前、ぐじぐじした女だね。噂とは大違いだ。お前みたいな女は好かない。」




篠原は最後にそう言いきると携帯を投げつけてきた。