さよなら、いつか。①―幕末新選組伝―


「もう3ヶ月か・・・。」




ここに来てあっという間に3ヶ月が過ぎた。





まだ現代の匂いがこんなにも染み着いているというのに。





帰る手段の目処すら立たない。





「翼は、帰りたいの?」





真剣な顔。




少し、寂しそうに見えたけれど。





「俺は帰らなきゃいけないんだ。あずも同じ。」






お母さんやお父さん、友達も、きっとみんな心配している。





もしかしたら警察沙汰でニュースになったりしているかもしれない。





そう考えると現代に早く帰らなければと気が早まる。





「そっか…。」





しゅんとなる篠原に少し微笑む。




こんなに良くしてくれている篠原には申し訳ないけれど、俺の居場所はここじゃない。




俺が存在するはずの場所は、紛れもなく2010年だから。





「なら、早くあずみに連絡を取るべきだよ。」





さっきとは打って変わってニヤリと笑みを浮かべている。




あずのことをいきなり呼び捨てにするもんだから驚いたけれど、篠原はいたって大真面目だった。






「いや、今はいいよ。」




俺にはまだ勇気がない。





「じれったいなぁ!」





「お、おいっ!」





篠原は俺の前の携帯を取り上げた。





や、やばい!




まだ心の準備が!


  
・・・でも。




よく考えたらこいつに使い方がわかるはずがない。




そう思って安心して手を離した。