「おい平助。俺ら土方さんに呼ばれてたんじゃなかったか?」
「あっ!」
2人は突然顔色を青くして、しまったとでもいうように口を手で覆った。
「じゃあな3人とも!」
二人は慌ただしく屯所の中に向かって走り去った。
「騒がしい奴らだ、まったく・・・。」
原田さんがふーっと溜め息混じりに呟く。
確かに、と思って私も頷く。
さっきまで刀を握っていたというのに、みんなのこの変わり身は凄い。
一晩寝ずに過ごしたわけだから、疲れもたまっているだろうに。
そう考えて、はっと気づく。
私も同じだってことに。
多分、無駄にはしゃごうとするのは赤を紛らわすため。
人を殺したという感覚を一瞬でもわすれようとするため。
みんな、心が痛んでいないはずなかった。
乗り切ったんだろう、と思っていたけれどそれは違う。
毎回、赤に染まる度に青を抱えて。
その度に、自分に催眠をかけて。

