暫く沈黙が続く。
誤解されてしまったかしら。
そりゃあ、誰だって思うよね。
「お前さ、総司に惚れてんの?」
やっぱり。
原田さんに向き直ると、原田さんは複雑そうな、悲しそうな顔をしていた。
「ほ、惚れてなんか!」
惚れてなんかない。
そう言おうと思ったのに、どうしてか言葉がつまってしまった。
キンさんに聞かれたあの頃は好きじゃないって言えたのに。
「わりぃ、今の忘れて。」
ははっと笑う原田さんはやっぱり、どこか辛そうで。
───ズキン
悲しくないのに胸が痛んだ。
まるで、原田さんの悲しさが伝わってきたように。
それは、深い青。
原田さんの強い瞳の中に、初めて青を感じた瞬間だった。
「は、早くでかして総司に持っていこうぜ?」
「う、うん。後は仕上げだけだから早く終わらせよ!」
原田さんがこくんと頷いてくれたから、また2人で調理用具と向き合った。
どこかしら気まずさを残して。

