さよなら、いつか。①―幕末新選組伝―



暫く沈黙が続く。





誤解されてしまったかしら。






そりゃあ、誰だって思うよね。





「お前さ、総司に惚れてんの?」




やっぱり。





原田さんに向き直ると、原田さんは複雑そうな、悲しそうな顔をしていた。






「ほ、惚れてなんか!」





惚れてなんかない。





そう言おうと思ったのに、どうしてか言葉がつまってしまった。





キンさんに聞かれたあの頃は好きじゃないって言えたのに。





「わりぃ、今の忘れて。」





ははっと笑う原田さんはやっぱり、どこか辛そうで。




───ズキン





悲しくないのに胸が痛んだ。






まるで、原田さんの悲しさが伝わってきたように。





それは、深い青。




原田さんの強い瞳の中に、初めて青を感じた瞬間だった。







「は、早くでかして総司に持っていこうぜ?」





「う、うん。後は仕上げだけだから早く終わらせよ!」





原田さんがこくんと頷いてくれたから、また2人で調理用具と向き合った。





どこかしら気まずさを残して。