「幼いながらに俺はそれは理解していた。だから、諦めた。」 「・・・気の小さい男だね。」 「しょうがなかったんだよ。」 そう呟いた原田さんの瞳は悲しげで。 あの楽天家な原田さんが、こんな表情をするなんて思わなかった。 「・・・原田さんは、今でもその人を?」 聞くつもりなんてなかったけれど。 どうしてか、自然に疑問を口にしていた。 「もう昔のことだよ。」 ははっと笑う原田さんはやはり、いつもとは様子が違っていて。 瞬間的にその人が心のどこかに引っかかっているんだな、と気づく。