走って。
走って。
ただ、沖田さんの背中だけを見つめる。
周りの情景なんて、目に入ってこない。
「はぁっ…、はぁっ…。」
人込みを掻き分けて一か所だけ避けるように人のいない場所に出る。
中心には、あの男の子とお母さんが震えながら立っていた。
「なんか金目のもんだせや?」
「どうでもいいから早く斬らせろ。」
「ギャハハハッ!」
狂ったような男の声。
現代では決して聞くことのできない台詞に、足が鉛のように重く固まる。
硬直している私の肩をポンとたたいて、沖田さんはあるものを差し出してきた。
「あず、ここは俺一人で行くからここで待ってて。危ないときは逃げていいから。…それとこれは一応渡しておく。」

