「沖田さーん!」
着替えを終えて部屋から出るとちょうど廊下を歩く沖田さんに会った。
「その着物、よく似合ってるよ。」
う、うう。
下から上までじーっと見られて私の目のやりどころがなくなる。
沖田さんはよく恥ずかし気もなくこんな台詞言えるな。
しらっとしている沖田さんとは打って変わって私は動揺を隠せずにいた。
「それじゃあ、出掛けようか。」
「は、はい!」
沖田さんの笑顔につられて私も笑顔になる。
キンさんには本当に感謝しなきゃな。
2人で長い廊下を歩いて屯所の外に出る。
そして、沖田さんはあの日通った門の前で歩みを止めた。
「これで逃げようなんて思ってないよね?」
さっきとは全く違う沖田さんの表情。
初めて会ったときに私を殺す、と言ったあの目。
「まさか、そんなこと思う訳ないじゃないですか。」
これは本当の私の意見。
逃げようとなんて、山南さんにバレそうになったとき以来一度も考えた事がない。
「それなら良かった。」
またいつもの笑顔に戻った沖田さんにそっと胸を撫で下ろす。
さっきの言葉と表情は少し胸に刺さった。
打ち解けてきたと思ったんだけどな・・・。
それでも、今沖田さんが私に向けてくる瞳は柔らかいから、少しは関係を築けたのかななんて前向きに考えた。

