「それよりお前今日随分機嫌良くねえか?」
原田さんが眉間にしわを寄せて尋ねてくる。
そんなに顔に出てるかな?
確かに、気づかないうちにゆるゆると口角が上がる。
「今日沖田さんに京の町を案内してもらうんだ!」
無意識にも声が弾む。
「ふーん・・・。」
私とは対照的に、原田さんは不屈そうな返事をしてきた。
なんで急にむつけるのさ。
「・・・せっかく構ってやろうと思ったのによ。」
そう言って原田さんは向こうを向いてしまった。
「原田さ・・・」
「うるせえ!」
原田さんはまだ顔を染めて部屋から出て行ってしまった。
なんだったんだろう、今の。
原田さんが気になったけれど、準備しないと出掛けられなくなるから昨日キンさんに選んでもらった着物に袖を通した。
着物は、もう一人で着れるようになった。
どんどんこの時代に同化し始めている自分に、時々物凄い寂しさに襲われる。
帰りたい気持ちは変わっていない。
今でもあの現代の形を、匂いをはっきりと覚えている。
隣に置いてあった制服を顔に押し付けると、確かにまだ香水の匂いがした。

