「さっそくだけど調理場に案内してくれる?」
「は、はい!」
キンさんの前に遠慮がちに据えていた腰を素早く持ち上げる。
キンさんもそんな私を見てゆっくり腰をあげた。
「前川邸に来るのは久しぶりさねえ。」
部屋からでて廊下を歩くと、キンさんは懐かしそうに辺りを見渡した。
「今まで来たことあったんですか?」
「そうだね。もう何年も前のことだけどね。」
キンさんはそう言うとにっこり笑った。
ここに女のひとはいないというのに、キンさんは出入りしていたことがある。
沖田さんの姉、という理由だったんだろう。
ということは、近藤さんや土方さんとも顔見知りなのかな?
「あっ、姐さん!」

