さよなら、いつか。①―幕末新選組伝―

気のせい?



ううん、あんなに明確に言葉を聞き取れる。




これは、現実だ。




翼は橋の真ん中で思わずしゃがみこんでしまった私の肩を持ってくれている。




「具合悪くなった?」




「ごめん…。」



その動揺した様子を見る限りだと、この声が聞こえているのは多分私だけ。




他の観光客も何食わぬ顔で歩いている。




―――ここにきて知らない振り?




知らない振り?



何を言っているの?



私、あなたのことなんか知らない。



そう伝えたいのにどこに叫べばいいのかわからない。