「へー、2時か。そりゃ、ちょっと遅いわね」
 午前中の授業が終わって、お昼休み。私はいつものように友達と3人で机をくっつけてゴハンしていた。
 グレープフルーツジュースをストローで飲みながら、そう言ったのが和沙ちゃん。きりりとした大きな目が印象的な弓道部員だ。この界隈で弓道部があるのがウチの高校だけだから選んだんだって。部活やってる和沙ちゃんはとても格好いいの。つり目の要因になっているんじゃないかって思うほど、きりりとまとめた髪の毛。シニヨンの先っぽに尻尾をわざと出したテク。
「うーん、でも。その夜更かしを知ってるってことは、今庄先輩はくるみちゃんよりも遅くまで起きてたってことになるよね?」
 和沙ちゃんとは対照的におっとりと柔らかい話し方をするのが穂積ちゃん。こちらは華道部員。このふたりはジャパニーズな取り合わせだなといつも思う。何でもさる家元と縁続きで、小さな頃から当たり前のようにお花をやっていたって話。他に日本舞踊も習ってるんだって。
「あー、それもそうね。突っ込むべきはそこだったわ!」
 ……別に、突っ込まなくてもいいと思うけど。
 ふたりの会話をのんびりと聞きながら、私もお弁当の蓋を開けた。今朝は慌てていたから、レンジでチンのコロッケを入れて来ちゃった。あとは作り置きのきんぴらと朝ご飯の残りの卵焼き。ほうれん草のおひたしも添えて。白ご飯の上には、大好物のたらこふりかけだ。
 ウチの高校はすぐ隣にコンビニがあるし、購買部も充実してる。だからかな、お弁当を持ってくる生徒は全校の半分くらい。中には「足りない」とカップラーメンを持参してくる男子もいる。
 お箸を動かしながら、ぼんやりと考える。そうかー、それもそうだな。臣くん、この頃すごく忙しそうだし。いつも参考書とか手にしてるし。よくよく考えたら、あとひと月半で受験生。きっと臣くんのことだから、現役合格を考えてるんだろうなあ。