ぽんぽんって、頭に置かれた大きな手のひら。そんな風にするから、ますます私の背が縮んじゃうんだよと思っちゃう。昔はほとんど目線が同じはずだったのに、今では臣くんの方が頭一個分遠ざかってしまった。
  分厚い生地で作られている昔ながらのセーラー服。申し訳程度にスカートの丈を詰めてみたところで、おしゃれに変わるわけもない。聞くところによると、なんとお祖母ちゃんが通っていた頃からこの制服だったんだって。デザイナーズブランドの制服が大流行なご時世では、すでに化石の存在ね。
 ……それにしても、なぁ……。
 どっから見ても、誰から見ても、お兄ちゃんと妹にしか見えない私たち。ま、実際もそんな関係だから仕方ないんだけど、一度くらい勘違いをしてくれる人がいてもいいと思う。なのにさ、こんなに格好良くて素敵な臣くんとべったりな私なのに、他の女子たちからやっかまれたことがない。臣くん、モテるんだよ、マジで。バレンタインとか、毎年てんこ盛りにもらうんだよ。それなのにさ。
 通勤通学時間帯のバスは、乗り込む前からすでに満車状態。ぎゅうぎゅうと身体を押し込んでどうにか収まると、臣くんは私が押しつぶされないようにガードしてくれる。
 こういう関係も、いつかは終わるんだよね。臣くん、今までずっとフリーだったけど、きっと近い将来にとびきりの運命の相手と出会うんだから。そのドラマのような一幕にも私は遭遇することになるんだ。
「……あ、今庄先輩だ!」
 すし詰めの向こうから、そんな声がしてくる。……きっと、気付いてるよね?
 どこへいても、必ず人目を引く臣くん。その影に隠れて私は冬道を走るエンジン音に紛れて小さく溜息をついた。