「おはよう、臣くん。今日もいい天気だね!」
電信柱の前、ゆっくりと微笑む臣くん。私たちはあんまり変わってないような気がするけど、とりあえずこれは「彼女」のポジションなのかな。うーん、悩むわ。
「そうだ、くるみ。ホワイトデーのお返しは何がいい? 希望があれば、何でも言っていいよ」
ここ危ないよって車止めを避けてくれてから、ふと思い出したように臣くんが言う。声を聞いてるだけで心地よくて、つい内容を聞きはぐっちゃうのが困るわ。何かいいなあ、臣くんがちゃんと隣にいるのって。
「えー、そうだなあ……」
ぐるんと首を回して、ピンとひらめく。ああ、いいかも。これ、使っちゃおう。
「私が一番『欲しいの』、臣くんが考えてよ。……でも、違ってたら受け取らないよ。分かった?」
えへへ、反撃だよ。
だって、やられっぱなしじゃ口惜しいもの。ひとりぼっちの時間に心の中に増殖した金平糖たちはいつの間にか甘い砂糖水に溶けちゃったけど、たった一粒だけ残ってたみたい。
臣くん、一瞬だけ驚いた顔になって。それからすぐ、にこーって笑う。この頃は私も恥ずかしがらずにアイコンタクトが取れるようになったんだよ。目があったら、ちゃんと見つめ返すことが出来る。それだけでもすごい進歩。
「すぐに10個くらい思いつくんだけど、全部ひとつずつ試してみてもいい? ――ただし、人前ではやめた方がいいようなのもかなりあるなあ。……ま、くるみのご希望とあれば僕も頑張るけどね」
ふふふって笑って、そのまま歩いて行っちゃう。いつもの坂道、見上げれば真っ青な空。私と臣くんの新しい一日が今日も始まる。
慌てて追いかける私の傍らで、沈丁花の甘い香りが漂っていた。
(とりあえず、今回はココまで)
電信柱の前、ゆっくりと微笑む臣くん。私たちはあんまり変わってないような気がするけど、とりあえずこれは「彼女」のポジションなのかな。うーん、悩むわ。
「そうだ、くるみ。ホワイトデーのお返しは何がいい? 希望があれば、何でも言っていいよ」
ここ危ないよって車止めを避けてくれてから、ふと思い出したように臣くんが言う。声を聞いてるだけで心地よくて、つい内容を聞きはぐっちゃうのが困るわ。何かいいなあ、臣くんがちゃんと隣にいるのって。
「えー、そうだなあ……」
ぐるんと首を回して、ピンとひらめく。ああ、いいかも。これ、使っちゃおう。
「私が一番『欲しいの』、臣くんが考えてよ。……でも、違ってたら受け取らないよ。分かった?」
えへへ、反撃だよ。
だって、やられっぱなしじゃ口惜しいもの。ひとりぼっちの時間に心の中に増殖した金平糖たちはいつの間にか甘い砂糖水に溶けちゃったけど、たった一粒だけ残ってたみたい。
臣くん、一瞬だけ驚いた顔になって。それからすぐ、にこーって笑う。この頃は私も恥ずかしがらずにアイコンタクトが取れるようになったんだよ。目があったら、ちゃんと見つめ返すことが出来る。それだけでもすごい進歩。
「すぐに10個くらい思いつくんだけど、全部ひとつずつ試してみてもいい? ――ただし、人前ではやめた方がいいようなのもかなりあるなあ。……ま、くるみのご希望とあれば僕も頑張るけどね」
ふふふって笑って、そのまま歩いて行っちゃう。いつもの坂道、見上げれば真っ青な空。私と臣くんの新しい一日が今日も始まる。
慌てて追いかける私の傍らで、沈丁花の甘い香りが漂っていた。
(とりあえず、今回はココまで)
