金平糖*days

 途切れ途切れの自分の言葉に、夜明けの小鳥たちのさえずりが重なっていく。坂の下、バス通りを行き交う車の音。雨戸が開く音。
 我ながら、すごい分からず屋だと思った。ちゃんと答えが出せないのに、それでも側にいたいって思うなんて。「この先しばらくは別行動しよう」って宣言されて、本当に私たちがそれきりになりそうになって、悲しくて辛くて、やっと分かった。
  今までは臣くんが側にいてくれるのが当たり前だったから、それがこの先もずっと続くように錯覚してた。いつかは臣くんに素敵な彼女が出来て、この関係が終わりになるかもって思ったけど。それも現実のこととしてきちんと認識出来てなかった。
 失ってから初めて気付く大切なもの、臣くんは私にとってなくてはならない人だったんだよ。
 昨日一日、自分なりに頑張って臣くんを探した。いっぱいの人の中から、ただひとりの存在だけ必死になって見つけ出そうとしてた。今までに知らなかった、色んな臣くん。私に対する「お兄ちゃん」の顔だけじゃなくて、普通の高校生で驚いたり慌てたりすごく新鮮だった。
  新しい臣くんを発見するたびに、私の中でむずむずと不思議な感情が膨らんでいく。ああ、そうか。私って本当に臣くんが大好きだったんだ。そして、こうしている今も、一秒ごとにどんどん気持ちが降り積もっていくんだって。
 ……もう、離れていたくないよ。
 居心地のいい「妹」のポジションじゃ、もう満足出来ないの。もっともっと、臣くんの近くに行きたい。出来ることなら、お互いが同じくらい大切なふたりになりたいな。
「――分かった」
 どれくらい時間が経ったんだろう。いつの間にか頬に暖かい光を感じていた。ずっと臣くんにもたれかかっていた身体、肩に手を添えてゆっくりとおこされる。目の前には優しい笑顔、朝陽にキラキラと輝いて。
「くるみの気持ち、有り難く頂くよ。……だけど、返品は不可だから。あとで返してくれって言っても駄目だからね」
 もう一度、今度はぎゅっと抱きしめられて。耳元で臣くんが「良かった」って小さく呟いた。