片手に紙袋、片手にチョコの包みを持って。臣くんが、静かに私を見つめてる。
久し振りに私に向けられた、心のこもった眼差し。それを見るだけで、もう泣けて来ちゃう。でも駄目、女の涙を武器にするなんてあんまりにもずるいことだもん。
唇をぎゅっと噛みしめて、臣くんを見上げる。口を開くと色んなものが飛び出して来ちゃいそうで、どうしていいのか分からない。
「……うっ……」
必死に歯を食いしばってみたけど。
ほろんと、とうとう涙がこぼれて。その瞬間に、臣くんの瞳が少し揺れる。何度か首を横に振って「違う」って瞳で訴えてから、私は灰色のスェットの胸にしがみついた。
「……くるみ?」
そりゃ驚くだろう、いきなりこんな風にされたら。だけど私は、滑らかな布地におでこを当てながら「これが学ランじゃなくて良かったな」なんて思ってた。胸のボタンとか、結構凶器だと思うんだよね。
「ごめん……なさい」
そこで一度、言葉を切る。次から次からこみ上げてくるもので、声が上手く出て来ない。布団から出たての臣くんの身体は、つんと男の人の匂いがした。
「ホントはね、最後まで何も思いつかなかったの。一生懸命考えてみたけど、駄目だった。臣くんの出した問題は難しすぎて、私にはどうしても解けない。だけど……だけどね、ひとつだけ気が付いたことがあるの」
ぐしぐしって鼻をすすって、必死で呼吸を整える。大きな心臓の音がものすごく速い。これって、私の? それとも……臣くんの?
「私、臣くんのことが好きなの。だから、……だからもう、離れているのは嫌。これからもずっと、臣くんの隣にいたい。駄目だよって言われても、きっと諦めきれないよ……」
久し振りに私に向けられた、心のこもった眼差し。それを見るだけで、もう泣けて来ちゃう。でも駄目、女の涙を武器にするなんてあんまりにもずるいことだもん。
唇をぎゅっと噛みしめて、臣くんを見上げる。口を開くと色んなものが飛び出して来ちゃいそうで、どうしていいのか分からない。
「……うっ……」
必死に歯を食いしばってみたけど。
ほろんと、とうとう涙がこぼれて。その瞬間に、臣くんの瞳が少し揺れる。何度か首を横に振って「違う」って瞳で訴えてから、私は灰色のスェットの胸にしがみついた。
「……くるみ?」
そりゃ驚くだろう、いきなりこんな風にされたら。だけど私は、滑らかな布地におでこを当てながら「これが学ランじゃなくて良かったな」なんて思ってた。胸のボタンとか、結構凶器だと思うんだよね。
「ごめん……なさい」
そこで一度、言葉を切る。次から次からこみ上げてくるもので、声が上手く出て来ない。布団から出たての臣くんの身体は、つんと男の人の匂いがした。
「ホントはね、最後まで何も思いつかなかったの。一生懸命考えてみたけど、駄目だった。臣くんの出した問題は難しすぎて、私にはどうしても解けない。だけど……だけどね、ひとつだけ気が付いたことがあるの」
ぐしぐしって鼻をすすって、必死で呼吸を整える。大きな心臓の音がものすごく速い。これって、私の? それとも……臣くんの?
「私、臣くんのことが好きなの。だから、……だからもう、離れているのは嫌。これからもずっと、臣くんの隣にいたい。駄目だよって言われても、きっと諦めきれないよ……」
