最初にセーラー服の集団が過ぎていって、その後2、3人ずつばらけて男の先輩たちがやってくる。半日の授業を終えて、みんなホッとした表情。歩みを進めながら必死に横目で確認しているのに、なかなか臣くんは現れない。
えー、もしかして違う通路から戻っちゃったのかな。
化学室は特別棟の1階にあって、教室棟への連絡通路はそれぞれの階にあるから何通りかのルートがある。でも1階の購買部の近くはお昼時で滅茶苦茶に混んでるし、2階は三年生がたむろってる。そうなれば、ここが一番あり得るかなと思ってたのに。
がっくりと肩を落として突き当たりの階段を下りようと思ったら、ひとつだけの足音が階下から聞こえてきた。自分に都合のいい期待をして、私の胸はにわかに高鳴っていく。何か、もう絶対。あの足音はそうだと思う。だんだん自分が超能力者になった気がしてきた。
「……あ……」
二階と三階の間の踊り場で、足音がぴたりと止む。真っ直ぐにこちらを見上げた瞳、階段の手すりに手を添えたまま、彼は全ての動きを止めた。
「……っ!」
一呼吸を置いて。目をそらしたのは、私の方。そのまま一気に階段を駆け下りる。その姿を臣くんが見ていたのかいなかったのか、振り向いて確認することも出来なかった。
自分でも馬鹿だなって思う。会いたかったのに、すごく会いたかったのに、その瞬間が来ると自分から逃げちゃうなんて。
きっと、臣くんもこんな私のこと変な奴だと思ったよね。別にちょっと挨拶くらい、しても良かったのに。口惜しい、すごく口惜しい。だって、臣くんは少しも変わってないんだもん。私ひとりが慌てたり悲しくなったりして、何か馬鹿みたい。
えー、もしかして違う通路から戻っちゃったのかな。
化学室は特別棟の1階にあって、教室棟への連絡通路はそれぞれの階にあるから何通りかのルートがある。でも1階の購買部の近くはお昼時で滅茶苦茶に混んでるし、2階は三年生がたむろってる。そうなれば、ここが一番あり得るかなと思ってたのに。
がっくりと肩を落として突き当たりの階段を下りようと思ったら、ひとつだけの足音が階下から聞こえてきた。自分に都合のいい期待をして、私の胸はにわかに高鳴っていく。何か、もう絶対。あの足音はそうだと思う。だんだん自分が超能力者になった気がしてきた。
「……あ……」
二階と三階の間の踊り場で、足音がぴたりと止む。真っ直ぐにこちらを見上げた瞳、階段の手すりに手を添えたまま、彼は全ての動きを止めた。
「……っ!」
一呼吸を置いて。目をそらしたのは、私の方。そのまま一気に階段を駆け下りる。その姿を臣くんが見ていたのかいなかったのか、振り向いて確認することも出来なかった。
自分でも馬鹿だなって思う。会いたかったのに、すごく会いたかったのに、その瞬間が来ると自分から逃げちゃうなんて。
きっと、臣くんもこんな私のこと変な奴だと思ったよね。別にちょっと挨拶くらい、しても良かったのに。口惜しい、すごく口惜しい。だって、臣くんは少しも変わってないんだもん。私ひとりが慌てたり悲しくなったりして、何か馬鹿みたい。
