金平糖*days

 授業と授業の間の休み時間って10分なんだけど、次の時間の準備とかあるから気が付くとチャイムが鳴っている。普段だったら何気なく過ごしてしまうちょっぴりの隙間が、今日の私にはとても重要だった。ふにゃっと気を抜いている暇はない。
 二時間目は授業が長引いたみたい、いつまで経っても2年G組の廊下は静かだった。
  そうっと引き戸から中を覗くと、臣くんはとっても真剣な顔でノートに何かを書き込んでる。全部が全部、選りすぐりの優等生たちの集団である「理数科」。張りつめた空気が痛いくらいだ。しばらくして、ホッとした笑顔。ゆっくり席を立って、教壇の方に歩いていく。先生と二言三言話をして戻って来る、綺麗な横顔。
  その後、他のクラスメイトたちもがたがたと立ち上がって、制服の林の向こうに臣くんは見えなくなった。
 三時間目が終わった後は、何人かの友達に囲まれてた。
  みんなとても真剣そう。臣くんの手元を息をひそめて見守っている。やがて「おおっ、そっかー!」って声がして、一同は大きく頷く。何か「すごいな」とか言われているみたいだけど、臣くんはあまり反応してないみたい。口元には柔らかい笑みを浮かべたまま、教科書を入れ替える。あ、次は移動教室だ、見つからないように隠れなくちゃ。
 四時間目が終わってすぐ、私はお弁当を持って調理室に向かった。インフルエンザの出校停止が解除になった同級生部員と先輩部員がふたりずつ来てくれることになってる。
 試作会は放課後すぐに始めないと間に合わないから、この時間で材料とか調理器具の最終チェックをするのね。オーソドックスな流し込みチョコと、濃厚な味わいのガドーショコラ。それからチョコチップやナッツがぎっしり詰まったチョコクッキーを作ることになった。あと、材料持ち込みで個人的に相談にも乗る予定。
 ……あ、来た。
 特別棟への連絡通路を通っていたら、向こうからどやどやと人の波が押し寄せてきた。あの集団の中に化学の授業を終えた臣くんがいる。移動教室からの戻り、ここを通るのだろうとだいたい目星をつけていた。