金平糖*days

 牧田くんも和沙ちゃんも穂積ちゃんもみんな揃って意地悪だなあって思うけど、やっぱり一番性悪なのは臣くんだよね。私がこんなに悩んでるのに、ヒントのひとつも与えてくれない。
 優しくて頼もしくて、いつも振り向けばそこにいてくれる日溜まりみたいな存在。ずっと信じていたのに、臣くんは何があっても変わらないって。それなのに、どうしてなの。
「頭で考えてたって、時間がもったいないでしょう。もうここは玉砕覚悟で突き進むしかないんじゃない……?」
 顔に似合わず過激な穂積ちゃんの発言に和沙ちゃんがうんうんと大きく頷いたところで、始業5分前を告げる予鈴が調理室内に鳴り響いた。

 ――突き進むって言ったってねえ……。
 今日はみっちり6時限まで授業が詰まってる。その上、昼休みと放課後は試作会のあれこれでいっぱいいっぱい。
 のろのろとお経のように教科書を読み進める古文の授業がようやく終わって、私は先生よりも早く教室から飛び出した。そのまま階段を下りて、2年生フロアの3階まで移動。一気にG組の教室の前まで進んでいくと、……あれ、空っぽだ。
 そうっと誰もいない教室を覗き込んで、時間割を確認。わわ、初っぱなから保健体育。体育館だったのね。だったら、1階の渡り廊下の辺りに張っていた方がベストだったかな。
  がっくりと肩を落としてたのは、ほんの一瞬。すぐに気を取り直して、今日の時間割を全部メモした。ふむふむ『体育・数Ⅱ・世史・化学・英E・現国・数B』……うわ、数学が2時間もある! さすが理数科。7時限まである日が週に3日もあって、さらに芸術選択がないっ! 何かぎゅうぎゅう過ぎて目眩がしちゃうよ。
 香りつきボールペンを握りしめたままそんなことを考えていたら、どやどやと中央階段の方が騒がしくなった。やば、戻ってきたのかな。慌てて教室を出て、北階段の柱の影に身を潜めた。
  女子は着替えに更衣室を使うけど、男子は教室だからそのままこちらに歩いてくる。スカイブルーのジャージ、2年生。私は必死に目をこらしながら、探した。