金平糖*days

 穂積ちゃんは、相変わらずののんびり口調。ゆっくりと考えを巡らせてるみたいに、少し首を傾げた。
「実はね、牧田くんには色々聞かれてるのよ、くるみちゃんのこと。最寄りの駅とか通学手段とか、それから誕生日とか。態度には表さなくても、前々から気になってたんじゃないかな?」
 ――えええ、そうなの? 知らないよ、聞いてないよ。
 もう穂積ちゃんってば、ずるい。そんな重要なことどうして黙っていたのよ。むーって睨んだら、彼女はにこにこしながら「だって、内緒って言われたんだもの」ってあっさり返してくる。
「ま、いいんじゃないの? このまま、牧田くんに乗り換えるのもひとつの手かもよ? いいよなー、どうしてくるみばっかり。男って分からない、みんなどこに目をつけているんだろう」
 ひどいなあ、和沙ちゃんまでそんな風に言う。ふたりとも、ヒトゴトだと思って気楽に構えてるんでしょう。こっちは本気で悩んでるのにさ、何かますますやさぐれちゃうわ。
 本当にさ、そんな脇道に逸れてコメントしなくていいから。少しは真面目に考えて欲しいわ。臣くんが一体、何を欲しがってるのか。バレンタインはもう明日なのに、まだ全く白紙の状態。嫌になっちゃうわ、もう。せっかく少しは前向きになったかと思ったんだけど、これじゃあね。
 あんな言い方をするんだから、きっと今までの11年間に私が臣くんに一度も渡したことのない品物を希望しているんだと思う。
  ……でもねえ。消去法で考えていくと、もうほとんどアウト。市販のチョコも手作り品も、ハンカチもタオルも本も万年筆もCDもDVDも。めぼしいものは全部贈っちゃった。だって、プレゼント絡みのイベントってバレンタインだけじゃないよね。クリスマスも誕生日も、臣くんが私にくれるからってことで何となくこっちからも渡していた。そんな高価なものは無理だけど。
  だったら、ここはやっぱり定番の手編みマフラーとかセーター? ううん、そんなのがギリギリになって間に合うわけないじゃない。タコやイカみたいに腕がいっぱいあるわけでもないのに。それくらいは、臣くんだって分かってるはずだ。
 ……じゃあ、そうなると……?