金平糖*days

 ――もう少し、頑張ってもいいんじゃない?
 そんな風に言われたところで、具体的にどうすればいいかなんて見当もつかない。
 運んだ材料をざっと小分けにして、冷蔵庫に入れた方がいいものは詰め込んで。段取りのいい牧田くんのお陰で、当日に残しておこうと思った作業まで終わらせることが出来た。
  金曜日と同じように駅前で別れて、ひとりバスで帰宅。ひとり掛けの席に座って、流れていく窓の向こうを眺めていた。
 本当に、臣くんと私って。
「会おう」と思わなければこんなにも接点がなくなるんだね。今更ながら思い知らされて、愕然とする。一生懸命追いかけなくちゃ、臣くんには追いつけない。そんな当たり前のことさえ、私はずっと気付かずにいた。
 バレンタインの当日、私が臣くんの「欲しいの」を持っていかない限り、きっとこのままの離れた関係が続くんだ。もしかしたら臣くん自身はそれを望んでいるのかも知れない。だったら無理にどうにかしない方がいいのかなとか、考えちゃうよね。臣くんが嫌がることはしたくないよ。
 ――俺は正式に立候補しちゃうんだけどな。
 ああ、それがあったか。でもなー、牧田くんだって軽すぎ。どこまで本気で言ってるのか分からないし。あんな言葉を真に受けるほど、私は馬鹿じゃないわ。多分、……きっと。
私は一体、あと何を頑張ったらいいんだろう……?

「へええ、それって。ファンクラブのお姉様方に吊し上げになりそうじゃない。すごい、二度もツーショットだったんだね。くるみって美味しすぎーっ!」
 月曜日、登校してすぐ。教室だと誰が聞いてるか分からないから、「準備を手伝って」って調理室までふたりを呼び出した。和沙ちゃんは今までの成り行きを一通り聞いて、本当に嬉しそう。何か、遊ばれてない? 私って。
「牧田くんのファンクラブなんて、あったの?」って聞いたら、穂積ちゃんが「うんうん」って大きく頷いた。そういえばよく、派手派手系の先輩たちがウチのクラスの前にたむろっていたりしたっけ。そうか、あの人たちは牧田くん目当てだったのね。確かに敵に回すのは恐ろしそうな方々だわ。
「でも、ただ軽いノリじゃないと思うな。彼って見た目に似合わず、真面目なところあるじゃない」