「ごめんなさいね、主人がいれば車で運んであげられるんだけど。本当に申し訳ないわ」
お母さんはそう言って、お総菜パンの包みを渡してくれた。丁度学校に着く頃にお昼だから、向こうで食べなさいって。商店街の入り口にあったパン屋さんの袋だった。わ~嬉しい、美味しそうだなと外から覗いていたのよね。
お店に置いてない品物は近所を当たってくれたそうで、試作会に必要な材料は全て揃っていた。買い出しのときはいつもお店を何軒かはしごするから、今回は手間が省けて嬉しい。そのあと手分けして紙袋に詰めたんだけど、牧田くんはすごく手際がいいの。ちゃんと重いものを底の方にしたり、色々考えてくれてる。
その上、予定していたよりもずっと安く上がっちゃった。いいのかなあ、すごいおまけしてくれたみたい。もしかして卸値とかなのかな……?
製菓用の塊チョコとか小麦粉とか入った重い袋を牧田くんが、チョコスプレーなどの飾りや紙ケースなどの入った軽い袋を私が持って、駅に向かった。
「二年前に、ここを抜けてすぐのところに大型スーパーが進出してきてね。今、この界隈はどこも経営が苦しくて大変なんだ。親父もついうっかりそれを忘れて発注出したりするから、この通り。買い取りだから、どうにかして売らなくちゃヤバイしね。ちょっと恥ずかしいところを見られちゃったかな」
以前はひとり雇っていたバイト店員さんも、半年前に辞めてもらったそうだ。ぎりぎりいっぱいの経営なんだってことが、ちょっと覗いただけの私でも分かっちゃう。
「そうかー、だから土日は忙しいっていつも言ってるんだね?」
牧田くんが特定の彼女を作らないって話は有名だ。私ですら小耳に挟んだことがあるくらいだもの。さすがに教室で隣の席に座った女子を五割り増し輝かせるってのは知らなかったけど。ミルクティーを思わせる綺麗な顔立ちなのに、もったいないなとか思ってた。……ま、それは臣くんにも言えることだけどね。
その理由が家の手伝いだったのは、すごく意外。ちゃらちゃらしたイメージがあるんだろうな、すっごく軽い男子なんだって勝手に認識してた。
実は女子には興味がないんじゃないかとか、アヤシゲなバイトをしてるんじゃないかとか、言われてるらしい。うん、確かに牧田くんはホストクラブとか似合いそうだね。ナンバー1とかになれるかもよ?
「うーん、それもあるけどなあ。なんかさ、面倒くさかったりしない? そういうのって」
かなりの重量になっているはずの紙袋を、軽々と持ち上げる牧田くん。「これくらいの力仕事は朝飯前だよ」なんて顔に似合わないことを言う。
お母さんはそう言って、お総菜パンの包みを渡してくれた。丁度学校に着く頃にお昼だから、向こうで食べなさいって。商店街の入り口にあったパン屋さんの袋だった。わ~嬉しい、美味しそうだなと外から覗いていたのよね。
お店に置いてない品物は近所を当たってくれたそうで、試作会に必要な材料は全て揃っていた。買い出しのときはいつもお店を何軒かはしごするから、今回は手間が省けて嬉しい。そのあと手分けして紙袋に詰めたんだけど、牧田くんはすごく手際がいいの。ちゃんと重いものを底の方にしたり、色々考えてくれてる。
その上、予定していたよりもずっと安く上がっちゃった。いいのかなあ、すごいおまけしてくれたみたい。もしかして卸値とかなのかな……?
製菓用の塊チョコとか小麦粉とか入った重い袋を牧田くんが、チョコスプレーなどの飾りや紙ケースなどの入った軽い袋を私が持って、駅に向かった。
「二年前に、ここを抜けてすぐのところに大型スーパーが進出してきてね。今、この界隈はどこも経営が苦しくて大変なんだ。親父もついうっかりそれを忘れて発注出したりするから、この通り。買い取りだから、どうにかして売らなくちゃヤバイしね。ちょっと恥ずかしいところを見られちゃったかな」
以前はひとり雇っていたバイト店員さんも、半年前に辞めてもらったそうだ。ぎりぎりいっぱいの経営なんだってことが、ちょっと覗いただけの私でも分かっちゃう。
「そうかー、だから土日は忙しいっていつも言ってるんだね?」
牧田くんが特定の彼女を作らないって話は有名だ。私ですら小耳に挟んだことがあるくらいだもの。さすがに教室で隣の席に座った女子を五割り増し輝かせるってのは知らなかったけど。ミルクティーを思わせる綺麗な顔立ちなのに、もったいないなとか思ってた。……ま、それは臣くんにも言えることだけどね。
その理由が家の手伝いだったのは、すごく意外。ちゃらちゃらしたイメージがあるんだろうな、すっごく軽い男子なんだって勝手に認識してた。
実は女子には興味がないんじゃないかとか、アヤシゲなバイトをしてるんじゃないかとか、言われてるらしい。うん、確かに牧田くんはホストクラブとか似合いそうだね。ナンバー1とかになれるかもよ?
「うーん、それもあるけどなあ。なんかさ、面倒くさかったりしない? そういうのって」
かなりの重量になっているはずの紙袋を、軽々と持ち上げる牧田くん。「これくらいの力仕事は朝飯前だよ」なんて顔に似合わないことを言う。
