昨日と同じ帰り道。商店街の脇を通り抜けながら、今日は女子たちの人だかりに振り向かなかった。
そりゃあさ、私だって「友チョコ」は配るよ? でもそれは手作りが基本だし、ああやってお店で買いあさるものじゃない。ねじり飴みたいにどんどんひねくれていく私の心、脇を歩く牧田くんはそれに気付いてるのだろうか。
「フリーになったって、本当だったんだ」
不意にそんな風に訊ねられて、綺麗な横顔がこっちに向き直る。いきなりだったからちょっとびっくりしたけど、すぐに気を取り直す。今日一日、遠巻きに視線を浴び続けていい加減嫌になっていた。同じことなら、こんな風に直球で訊ねられた方が楽だわ。
「違うもん、私と臣くんは最初からそんなんじゃないんだから。もしかして、牧田くんも誤解してるの?」
わー、やっぱりだけど。本当にあっという間に知れ渡ってるんだなあ。ちょっときつい反応になりすぎたかなって、言い終えた後に反省したけど。彼の方はそれほど気にしてもいない感じ。
「あはは、ごめんごめん。それは知ってるよ、いつも君が木藤さんたちとしゃべってるの聞いてるから」
木藤さん、っていうのは和沙ちゃんのことだ。ああそうか、隣の席なんだもんね。おしゃべりの内容とか全部筒抜けなんだ。別に聞かれてたって、どうってことないけど。
そんなこんなしているうちに、あっという間に駅前。牧田くんは電車通学だ。じゃあねってそのまま行っちゃうのかと思ったら、歩きかけてもう一度くるりと振り向く。
「ところで。クッキング部の買い出しってどうなったの? 何か、困ってるみたいだったけど」
……あ、そこも聞かれてましたか。私が複雑な表情のままでいたら、彼はカメラ目線の微笑みを作って言う。
「日曜で良かったら、俺手伝ってもいいけど。だけど、条件があるんだよね。朝の10時に家の前まで来てくれる? あ、前もっているものを教えて貰えると嬉しいな」
「はい、これ」って、連絡先を書いたメモを私に握らせて。牧田くんはどこまでも似合わない学ラン姿のまま、駅の構内に消えていった。
そりゃあさ、私だって「友チョコ」は配るよ? でもそれは手作りが基本だし、ああやってお店で買いあさるものじゃない。ねじり飴みたいにどんどんひねくれていく私の心、脇を歩く牧田くんはそれに気付いてるのだろうか。
「フリーになったって、本当だったんだ」
不意にそんな風に訊ねられて、綺麗な横顔がこっちに向き直る。いきなりだったからちょっとびっくりしたけど、すぐに気を取り直す。今日一日、遠巻きに視線を浴び続けていい加減嫌になっていた。同じことなら、こんな風に直球で訊ねられた方が楽だわ。
「違うもん、私と臣くんは最初からそんなんじゃないんだから。もしかして、牧田くんも誤解してるの?」
わー、やっぱりだけど。本当にあっという間に知れ渡ってるんだなあ。ちょっときつい反応になりすぎたかなって、言い終えた後に反省したけど。彼の方はそれほど気にしてもいない感じ。
「あはは、ごめんごめん。それは知ってるよ、いつも君が木藤さんたちとしゃべってるの聞いてるから」
木藤さん、っていうのは和沙ちゃんのことだ。ああそうか、隣の席なんだもんね。おしゃべりの内容とか全部筒抜けなんだ。別に聞かれてたって、どうってことないけど。
そんなこんなしているうちに、あっという間に駅前。牧田くんは電車通学だ。じゃあねってそのまま行っちゃうのかと思ったら、歩きかけてもう一度くるりと振り向く。
「ところで。クッキング部の買い出しってどうなったの? 何か、困ってるみたいだったけど」
……あ、そこも聞かれてましたか。私が複雑な表情のままでいたら、彼はカメラ目線の微笑みを作って言う。
「日曜で良かったら、俺手伝ってもいいけど。だけど、条件があるんだよね。朝の10時に家の前まで来てくれる? あ、前もっているものを教えて貰えると嬉しいな」
「はい、これ」って、連絡先を書いたメモを私に握らせて。牧田くんはどこまでも似合わない学ラン姿のまま、駅の構内に消えていった。
