金平糖*days

 臣くんは地区のサッカークラブに所属していて、かなり活躍してたのね。そうすると、他の小学校の女子とかからもチェックされて、積極的な子たちに声を掛けられたりしちゃうの。そう言う現場には結構遭遇した。
 彼女たちが一番先に気になるのは、やっぱり私の存在だったみたい。そりゃそうだよね、金魚のフンのようにどこでも一緒にいるんだもの。これじゃあ目障りになって当然だと思う。
 ――ナニヨ、アノコ。
 あからさまな視線に晒されるたびに、居心地が悪いなあと思い始めた。臣くんは全然変わらないけど、私の方がね、どうしても。
 それにさ、そういう女子たちってすごく可愛いのね。ブランドものの服とかでばっちり決めていて、リップとかまでつけている。ぴかぴかきらきらして、綺麗にデコレーションされたショーケースの中のケーキみたい。すっごく大人っぽく見えたし。
 強気な眼差しに耐えきれずに俯けば、ひらひらスカートに付いた飾りレェスがふわんふわんと揺れていた。
 児童会長に応援団の団長に紅白リレーのアンカー。最後の締めは卒業式のハイライト、卒業生代表の答辞。優等生のチェックポイントを全てクリアして、臣くんは私よりも1年早く中学生になった。
「サッカーを辞めちゃったから、身体がなまっちゃってさ」……そんな風に言ってたのに、いつの間にか今度は陸上部のエース。私が入学する頃には校内で知らない人がいないくらいの有名人になっていた。
 学校の行き帰りが一緒だったのに、どうして気付かなかったんだろう。同じ制服を着ているのに、臣くんだけがものすごく目立つ。背が高いのはもちろんのこと、たとえようのない存在感が漂っているのね。周囲の視線が、全て臣くんに引き寄せられる。そして当の本人はそれを気にする素振りもなく平然としていた。
 ――なんか、やりにくいなあ……。
 どうしてだかは分からない。でもその頃からだろ思う、私の心の中には始終とげとげした感情が湧くようになった。たとえるなら金平糖。色とりどりの砂糖菓子が心の中を転がっていく。そのたびに控えめな突起に敏感な表面がさすられるのだ。