金平糖*days

 ……それにしても。どうしよ、チョコレート。
 実を言うとね、まだ臣くんへの今年のプレゼントも全然準備出来てない。穂積ちゃんにばれたら「駄目じゃない」って叱られちゃいそうだけど、もう頭の中がそれどころじゃなくて。臣くんならきっとコンビニの売れ残りチョコでも喜んでくれると思うから、ついつい後回しになっちゃう。
 まあねえ、臣くんは私からの分がひとつ減ったところで全然ダメージないと思う。だから、別にいいかなって思ったりもするけど、やっぱり毎年のお約束だから何となくね。
 私が初めて臣くんにチョコをあげたのは、何と4歳の時だったんだって。当時のことは全然覚えていない、だけど確かにもらったって臣くんが言う。
 そんな感じで、今年はとうとう12回目、一ダースだ。それが何、って感じだけど。初めはお店で売ってるありきたりな市販品、そのうちに手作りのクッキーとかケーキとか生チョコとか。もしも歴代の全てをずらりと並べたら圧巻だろうな。もう一通り何もかもやりましたって感じで、すでにネタ切れって言った方がいいかも。
 甘いものも辛いものも何でも好きな臣くんだから、そんなに悩むこともないんだけどね。ううん、この「何でもいい」って言うのがくせ者だったりするのかも。
「くるみ、お待たせ」
 私の影の上を、もうひとつの長い影が横切っていく。赤いリュックが背中にちょこんと乗ってる感じ。学ランって、肩のラインがぴちっとしていていいよね。夕焼けはまるでスポットライト。臣くんの存在感がさらにアップしてる。
「ううん、今来たところだよ」
 少しだけ斜め後ろを歩くのが好き。臣くんに気付かれずにずっと見つめていられるから。和沙ちゃんの言葉じゃないけど、これは「眼福」。夕暮れの臣くんには後光が差していて、とっても御利益がありそうだ。
 部活の大会とか大きな学校行事の前とかじゃない限り、臣くんは5時過ぎには必ず待ち合わせ場所に顔を出す。もしも遅れるときには携帯に連絡が来るんだけど、そう言うことも月に一度あるかないか。不思議だなあと思わないでもない。だけど改まってそんなことを訊ねるのも変だし、何となく過ごしてしまってる。