今となっては、あの一週間が全て幻のように思える。 現に枝垂れ桜はあの日満開になってたはずなのに、枝には蕾がちゃんとついている。 でも、幻じゃないという確信があった。 病院でお母さんに聞かれた。 あの日どこに行ってたの?と。 馬鹿正直に翔のとこ、なんて答えたら違う意味で入院しろと言われそうだったので、どうして?と聞き返す。 するとお母さんはハンカチを取り出して開いた。 『綾の頭にこれがついてたの』 その中にあったものを見て小さく声をあげる。 ————そこには、淡い花びらがあった。