暗闇の中で浮かびあがるその姿は妖しく、 沢山ある桜の木の中で、ただ一本だけが咲いている姿は何とも言えない空気で包まれていてそこだけが異世界のように感じられた。 花びらの一枚一枚も薄っすらとだけど、光ってるように思える。 その世界に踏み込んだら夢のように消えてしまう気がしたけれど、私は迷わずに足を踏み入れた。 だって、あいつの姿が見えたから。 あいつは笑ってこっちを見ていた。 花びらのような淡さで、 まるで触れたら消えてしまいそうなほど………。