「…優、それ……」
唖然としている莉子とはっきり目を合わすこともできずに、莉子の後ろにある桜の木の幹を見つめる。
横に座る莉子は少しだけ震えてて…。
「勝手なのは分かってる。散々莉子の気持ちめちゃくちゃにして、もう一度戻れなんて…都合が良過ぎるだろ」
「…そんなことない…。だけど…」
痛いほどの莉子からの視線。
たぶんまだ疑っているんだろう。
また遊びだったらどうしよう。なんていう不安が消えないんだろうな。
「…絶対裏切らない。約束する…」
「うん…分かってる…。優も別れたくて別れたわけでもないんでしょう?」
「当り前だろ…」
草野さえいなければ、莉子をこんなに不安にさせなくてよかったのに。
そう思ってしまう。
「…もう一度、俺の傍に戻ってきてくれねぇ?」
「優が離れて行ったんだよ? 私はずっと待ってた…」
「じゃあ、戻ってもいい? 俺が行く」
そう言うと少しだけ笑って俺に飛びついてきた莉子。

