それじゃ…お互い進まないんだ。
莉子はこんな俺でも泣くほど必要としてくれているのに。
応えれない俺は臆病だ。
「…無理だ。莉子は早く好きな人を作って幸せになってほしい」
「………優ッ、嫌……!」
泣き崩れる様に膝から倒れて行った莉子。
ごめんな、応えれなくて。
今すぐ抱きしめたい。
いつの間にか雨も降っていて、莉子の綺麗な黒髪は少し濡れている。
「…兄貴…? 莉子ちゃん……?」
「夏弥…」
丁度、入学式の帰りなのか、同じ制服を着て…傘をさしながら立っている。
泣き崩れている莉子と立ちすくんでる俺を見ながら。

