「兄貴、おかしいだろ。 先に他の女に乗り換えたのは兄貴でしょ。それに莉子ちゃんは俺と何もないから」
夏弥君もズボンだけジャージになっていて着替えている途中だったのかな。
夏弥君に借りたスウェットを握りしめながら、優をじっと見続ける。
「…優には関係ないでしょう?」
「は?」
「優が草野さんと付き合っていようが私には関係なくて、私が誰を好きになろうともう優には関係がないの」
「…なんだよ、それ」
綺麗にセットされた髪をぐしゃぐしゃにしながら、眉間にしわを寄せた優。
「草野さんと仲良くね」
今までの最高な笑顔を優に向ける。
それを見た優は何も言わずに部屋を出て行った。
「莉子ちゃん…良かったの? あんなこと言って…」
「うん。いつまでも優に気持ちを押しつけててもね…。次の恋探さなくちゃ! 自分の中でのけじめだよ」
夏弥君にはそう言ったけど……。
実際、気持ちの整理なんか着ける気なくてずっとこのまま、優を好きでいたかった。

