俺は兄貴の目が一瞬揺らいだのを見逃さなかった。
すぐにまた死んだ目になったが。
「…あんなに突き放したのに莉子がまだ好きなわけないだろ」
「…兄貴が思ってるより莉子ちゃんは強いんだぜ?」
倒れても…一切弱音を吐いていない莉子ちゃん。
体はついていけてなくても心はしっかりとしてて、誰より凛々しい。
臆病な兄貴とは全然違うんだ。
「もし好きじゃなくなったとしても、あんな風に完全に莉子ちゃんを拒否しなくてもいいだろ?」
「……それが出来るなら…そうしたい」
小さな声でそう言った兄貴。
「は?」
「俺だってうんざりだ!! こんな弱い俺も嫌いだし、数分ごとに送ってこられるメールも1時間ごとの電話も全部嫌いだ!」
何のことか分からなかった。

