「…離してっ」
優は何事もなかったかのように私の横を通り過ぎて行った。
…少しでも期待した私がバカだったのかもしれない。
次々に溢れてくる涙と感情がごちゃ混ぜになって気持ち悪い。
「……兄貴ッ…って…莉子ちゃん…?」
優が通り過ぎた後にすぐに私の横を通り過ぎようとしたのは夏弥君。
「なっ、夏弥君!」
「……ちょっと、どういうこと? ていうか…まず莉子ちゃん離して」
私の肩を掴んでいた手の上に夏弥君の手が置かれた。
「なんだ、てめぇ?」
「なんだはこっちでしょ。女の子の肩は気軽く触るものじゃないよ」
私の肩を掴んでいた男の人の顔が渋くなっていくと同時に夏弥君に掴まれていた手が肩から離れて行くのがわかった。
「…なんて力だよ……」
男の人はそういうともう一人の人を連れて走って行った。

