目の前にはさっきの先輩たちじゃなくて見慣れた背中が見えた。
「何やってんの?」
「…え、と…違うの、優君」
「何が違うんですか?」
「……ッ、鈴木さんが…」
「莉子が、何」
「急にここに呼び出してきて…来てみたら急にビンタされて…」
「完全に重症は莉子ですよね」
頬が少し赤くなってる先輩は自分の頬を押さえて泣きながら優に訴えた。
優はまたいつもの無表情で冷たく言い放つ。
「それに、莉子はそんなことしない。するならもっと派手にやってる。たぶん今頃先輩たちぼろぼろになってますよ」
無表情だった優に少しだけ笑みが浮かんだ。
…にしても酷くないか。
「莉子はこんな中途半端なビンタはしねぇぞ」
急に敬語をやめた優は先輩たちを睨みつけた。
「早くどこかに行ってくれません? 顔、見たくない」
「……ッ」
先輩たちは泣きながらどこかに行ってしまった。

