「今日はありがとうございました。また明日、伺います。」


ガチャッ
バタンッ


スーツをきちっと着こなし、エリートの雰囲気漂う若い刑事はそう言って、家を出た。
そしてこの家にはおふくろと俺、うちが雇っている家政婦だけがいた。


「奥様、紅茶をお入れしましょうか?」

「いえ、結構よ。今日はもう寝るわ、井上さん今日は帰って構わないわ。」

「そうですか…あまり無理をなさらないでください。」

「そんなの分かっているわ。でも…こんな状況ですもの、どうしたらいいのよ…」

「奥様…」


おふくろの顔は全く血の気がなく、体も震えていた。
このままにしたら、もうすぐ倒れるだろう。


「おふくろは俺が連れて行きます。井上さんはもう帰ってください。」

「…はい、かしこまいりました。」


井上さんは近くにあった自分の鞄を持って家を出た。