籠鳥~溺愛~

「………っ」

 そう問い詰められ、美冬は言葉に詰まる。

(言える訳……ない。鏡哉さんにべたべた触るあの人が、嫌だったなんて――)

「許して、下さい……」

 美冬は深くお辞儀をして許しを請う。

「許さない」

 初めて聞く、鏡哉の厳しい声。

 びくり、美冬の小さな体が震える。

 ドサリ。

 気が付くと美冬はソファーの上に押し倒されていた。

「き、鏡哉さっ……んっ!」

 襟ぐりの空いたワンピースから覗いた鎖骨の上に吸い付かれる。

「理由を言わないと、許さない」

 美冬はとっさに逃れようと身を捩ったが、両手を鏡哉に抑えられていて、びくともしない。

「ほら、早く言わないと――」

 ペロリ。

 鎖骨に沿って舌を這わされる。

「やっ……」

「知らないよ――?」

 暖かい舌がぬるりと鎖骨の上を辿る。

 気持ちいいのか気持ち悪いのかよくわからない感覚に、全身がぶるりと震える。

「だ、ダメ……!」

「早く」

(も、もう、ダメ!!)

「あの人が鏡哉さんに触れてほしくなかったんですっ!!」

 限界を感じ、美冬は大声で叫んでした。

「あの人?」

「い、伊集院さんに、鏡哉さんを、さ、触ってほしくなかった――」

 何の涙なのか、美冬の涙腺が壊れたように、涙が大きな瞳から零れ落ちる。

「ふ、ふぅ……やだ、やだったんです」

 鏡哉が両手を解放したので、美冬は顔を覆って涙を堪えた。

「ふ、可愛い、美冬ちゃん」

 そのいつものセリフに、美冬は恐る恐る手を退かせて鏡哉を見上げる。

 
 そこにはいつもの見知った鏡哉の意地悪な笑みがあった。