籠鳥~溺愛~

 その後、数分で鏡哉はテーブルに戻ってきたが、美冬は自己嫌悪で俯いてばかりで、最後に出された小菓子をつまむ気にもなれなかった。

 そんな態度の悪い美冬に愛想を尽かしたのか、向かいの席から小さな溜息が聞こえ、美冬はおびえたように小さく震えた。

 鏡哉が頼んだらしい代行が車を持ってきてくれ、数十分もしないうちに二人はマンションに戻ってきていた。

 美冬はまだ落ち込んでいたが、家政婦の仕事をしないわけにはいかない。

 いつも通り鏡哉のジャケットを脱がせると、ブラッシングをかけ、クローゼットへと直す。

「美冬ちゃん、こっちおいで」

 シャツとネクタイになった鏡哉が、リビングのソファーに座りながら、美冬に手招きする。

(おこ、られるのかな……)

 しかしどう考えても悪い態度をとったのは自分だ。

 美冬は決心して鏡哉の目に前に歩み寄り、立ち止まった。

 鏡哉は真っ直ぐ美冬を見つめてくるが、美冬は目を伏せた。

「すみません……」

「うん」

「伊集院様に対して、好ましくない態度を取ってしまいした」

「うん」

「………申し訳――」

「どうして?」

「え?」

 再度謝ろうと腰を折ろうとした美冬に、鏡哉が口をはさむ。

「どうして、あんな態度を取ったの?」