龍と兎



その時、彼の頭の隅の隅、殆ど忘れていた事実が閃光の速さで脳内を駆け抜けた。




昨年のタイマントーナメント、学園一の武人を決めるべく開催されたあの大会の優勝賞品が確か――


『学食の食券、百万円相当』


だったような。




「ふざけんな」


途端に険しくなる青年の目付き。


怒りの焔を湛えながら、眼帯に被われていない左眼が少女を睨む。




「タイマントーナメントの優勝賞品だろが、それは。あの時俺を斬った事に今さら罪悪感でも感じたか?詫びようと思ったのか?俺はな、こんなもん、お情けで譲って貰う筋合いなんざねえぞ」


彼にとってそれは最大級の侮蔑、最悪の屈辱。


ぐぐ、と音を立てて、右の拳に籠もる力が増す。