「珠紀ィィィ――!!」

「…!?」


上から声が聞こえる…

そう思った時にはあたしの意識はなかった。



―――――


「んん…」

「珠紀!?無事か…?」

「や、まと…」


目を開けると、整った顔。

この男は大和だ。

あたしの愛しい…恋仲にある男だ。

気づけば辺りはもう月の出る夜で、あたしは桜の木にもたれていた。


「あの化け物は俺がぶった斬ったから…安心しろ」

「すまない…。助かった」


名高い女侍、と言えども所詮は女。

適わぬ相手や、油断をすれば危機に遭うのもたびたびだ。


「足は…痛むか?」


袴をめくり、足首を見てみると赤黒い痕がはっきりと残っている。


「ああ…。たちの悪い毒のようだ」

「おぶってやろう。…ほら」


大和はしゃがんであたしを背中に招く。

あたしは黙って上に乗った。


「夜風が気持ちいいな…」

「そう…だな」


大和はあたしをおぶりながら、梓をしっかりと引いてくれる。


「あのガキが心配してるだろう」

「そうかもな…」


梢のことだ。

まだ眠りもせずに待っていてくれるのだろう。