リビングの電気を手探りで点けると
ソファーの上に気持ちよささそうに寝息を立てて眠っている杏がいた。
「…良かった。」
…帰ってなくて。
杏の姿を見ただけで疲れが癒された気がした。
俺は杏のそばに行くと、眠っている杏を優しく抱き締めた。
受験お疲れさま。
よく頑張ったね。
俺は起こさないように心の中でそう呟いた。
「んっ…あれ?ゆ…う?」
起きたばっかりで舌足らずな声の杏。
起こしちゃったな。
でも今日はもう遅いし、帰らないとな。
「遅くなってごめんな。
今日部活が延びて遅くなったんだ。」
と言うと、杏は首を横に振って笑顔で
「おかえり」
と言ってくれた。

