この着信音はディスプレイの発信者を見なくたって誰だか分かる。
ずっと声の聞きたかった人だからね。
「もっもしもし…」
勢いよく電話に出たのはいいけど急に戸惑ってしまったあたし。
「クスクス…もしもし。おはよ、杏。」
あー、やっぱり笑われた。
でも昨日からずっと話をしたかったから嬉しい。
それに優から電話をしてきてくれたから余計にね。
「おはよう。朝からどうしたの?」
「決まってんじゃん、そんなの。
メールにしようと思ったけどやっぱり口でちゃんと言いたいから電話した。
受験頑張って。一緒には行けないけど大学から応援してるから。」
あたしは一度コクンと頷いてから
「うん、ありがとう。頑張ってくるね。」
「おう。緊張してたら難しいとは思うけど…
とにかく、焦らないで落ち着いて試験や面接に臨んで。
どうしても緊張して不安になったらいつでも連絡してきて。」
と優しい言葉を掛けてくれてあたしの中にあった緊張感を一気に取り除いてくれた。

