「け…い?」



まさか抱き締められるなんて思わなくてどうしていいか分からなくて



振りほどくなんてことは頭の中に浮かばなくて



されるがままだった。



「山下優が何もしないのなら



杏が嫌って言っても俺はもう離さないから。



俺ともう1度付き合って。



俺はお前が好きだ。」



あたしの耳元で彼はそう囁いた。



圭の気持ちを聞いて嫌な気持ちはしないし



なんだかその気持ちを聞いて純粋に嬉しかった。



いつかこの時が来るってなんとなく分かっていたような気もしたけど



まさかその日が今日になるなんて思いもしなかった。