side 杏
あたしはしばらくして圭の胸を叩くのと泣くのを止めた。
……良かった。
圭は浮気をした訳じゃなかったんだ。
もう十分だよ。
それだけで今まであたしの気持ちは報われたから。
これ以上はもう求めたりしない。
本当は“ずっと一緒にいたかった”なんて思ったりしない。
あたしは急にこんな公共な場で圭の胸を叩いていたことが恥ずかしくて下を向いていた。
すると、隣の圭は誰かと電話していていきなり……
「だからまだ俺の話だけでは信じきれないかもしれないからお前からも話してやって。」
そう誰かに告げると、あたしは圭の携帯を渡された。
最初、あたしは誰だか圭が教えてくれないし首を横に振っていた。
それでも「出て」と言って目を離さない圭に負けたあたしは出ることにした。
ディスプレイは真っ暗で誰だか分からなくてきっと中学校一緒だった人だと目星をつけておそるおそる電話に出てみた。

