「うー…ぐすっ、なん…であたしには…何…にも相談してくれ…なかった…の?」
片方の手は止まることのない涙を拭って、もう片方の手は俺の胸を未だに叩いている。
確かにあたしは役立たずだけど何かできたかもしれないのに、と続けて今度はぼやいている。
違うんだよ、杏。
決して杏を頼りにしてなかった訳なんかじゃない。
何度も杏に相談をしようか悩んだ。
別れることだって本当に本当に嫌でどうしたら最良か考えた。
そしてその結論が……
「俺は…杏の笑顔を守りたかった。ただそれだけだよ。
こうやって別れて離れてしまっても杏が笑顔でいてくれれば俺はまたバスケだって、なんだって頑張ることができる。
だからずっとお前は笑ってろ。でも辛くなったら、こうやって思いっきり泣け……山下先輩の前でな。」
あの先輩になら杏を任せられる。
きっとこうやって泣かせたりしないで一生守り通してくれるはずだ。

