―――放課後

 
 「ちょっと美羽。お兄の大学はS駅の方だよ。どこ行くの?」

 気持ち良く自転車をこいでいたら、緋音が制服の裾を引っ張った。

 「え。どこってS駅だけど…」
 「そっちはN駅ですけど」

 初めて通った道でも、さすがに駅の方向は。そんなバカじゃない。

 ……と思って
 道路の隅の看板をみると、


 <この道を直進600mにてN駅>


 あ~ぁ。やってしまった。
 たぶん、今までの中で〝一番”酷い。


 「あんたの方向音痴も、呆れを通り越して感心するわ」
 「あはは。そりゃどーも」
 「戻るよ、アホ」
 「はーい」

 今までの道を戻るって、結構キツい。

 明日の朝は、起きられないかも…。
 なんて思っちゃったりして。