石段を下りきると、花火が終わって、だいぶ減ったものの、未だにたくさんの人達がオレンジ色のライトに照らされながら、楽しそうにはしゃいでいた。
「稜君、お腹は空いてないの?」
「あー、ちょっと空いたかも! 美月ちゃんは?」
「私もちょっと空いたかもー」
「じゃー、何か食べてから帰ろうか!」
嬉しそうにニッコリ笑った稜君だったけど……。
「稜君?」
「……ちょい待ち」
「その子達、食べるの?」
「……」
何故か立ち寄ったのは、金魚すくいの屋台。
真剣な顔で、多分、息を止めている稜君が向き合ってるのは、朱色の金魚がちょっと窮屈そうに泳ぐ、金魚すくいのプールだった。

